あなたが知らない地下で帝国を築くTikTokコミュニティ5選

はじめに

TikTokはかつて、カバーダンスとリップシンク(音楽や他人の音声に合わせて口を動かすこと)によって注目を集めたモバイル端末向けショートビデオプラットフォームです。当初はそのような特徴から「子供のためのSNS」というイメージが強く、そこには少なからず皮肉的な意味も込められていました。しかし現在、日本におけるTikTokの利用者は40代男性の割合が最も大きいとマーケティング会社「edamame Japan」は指摘します。

実際に今日、あなたがTikTokを10分間スワイプすると、カバーダンスやリップシンクと同じかそれ以上に英会話や現代アート、お笑いや不動産、法律といった、必ずしも子供向けでないコンテンツを数多く目にするでしょう。単純に年齢だけで区切った比較では依然として24歳以下、いわゆるZ世代のユーザーが半数近くを占めますが、それでもこの事実は疑いもなくTikTokの変化を表しています。

このように、現在のTikTokではニッチを含む様々なテーマのコンテンツが存在しており、その中の一部はユーザーを巻き込みコミュニティ化し、活発なファンダムとして機能しています。これを踏まえて、より多くのユーザーと効率的に繋がることを検討しているブランドは、これらの既に繁栄しているコミュニティについて学ぶことでより効果的なマーケティングが期待出来ると言えるでしょう。また、これらのコミュニティはブランドが今日の大衆文化を取り巻く多くの要素を明らかにするのに役立ちます。こうした要素は清涼飲料水、保険サービスから地方の民宿まで、すべてのブランドが活用出来る可能性があります。 

これから紹介する5つのコミュニティは、現在のTikTokにおいて絶大な影響力を保有する大衆文化の要衝です。

(1/5)金融経済コミュニティ

Z世代は誕生以来、常にインターネットに囲まれて成長してきた真のデジタルネイティブです。彼らは、地球温暖化やオゾン層の破壊が声高に叫ばれる前の時代を知らず、コロナウイルスによるパンデミックや大規模な震災、リーマン・ショックをはじめとする複数の経済危機など、大規模な世界の変化を幼少期から経験してきました。そしてこうした経験は彼らの適応性を刺激し、お金についての関心を高めました。

こういった背景から、TikTokでお金志向のコミュニティが繁栄するのは当然とも言えるでしょう。同様のトレンドは英語圏で特に顕著で、ハッシュタグ『#MoneyTok』(85億ビュー)や『#PersonalFinance』(46億ビュー)は投資、債務教育、クレジットカード、貯蓄のヒントなど、様々なお金についてのコンテンツを提供しています。

また、いつの時代にもSNSには高額な初期費用を必要とする”副業”を紹介するユーザーの存在がつきものですが、こうしたユーザーが徐々にTikTokに活路を見出し参入してきたことがきっかけで、TwitterやInstagramより遥かにオープンなコメント欄を有すTikTokでは疑念と嫌悪、羨望と期待の入り混じったコメントが溢れ、コミュニティを盛り上げるのに一役買いました。

このコミュニティは、お金に対するZ世代の傾向を物語っています。最近のニールセンの調査によると、Z世代の約54%が自分の会社を立ち上げたいと考えているようですが、これは人より裕福になりたいという彼らの欲求を如実に表しています。経済的独立と早期退職を目標とするライフスタイルを啓蒙するムーブメント「FIRE」がここ数年急激に認知され始めたのも偶然ではないでしょう。

Z世代におけるお金への関心は日に日に高まっています。特にコロナが人々をTikTokに押し込み、こうしたコミュニティとの接点をより増加させていることを考えると、あらゆるお金に関連するブランドがこのトレンドを利用しない手はないでしょう

(2/5)スピリチュアルコミュニティ

Z世代は不確実性、気候変動、政治的混乱に溢れた世界で生まれ育ったため、占星術、陰謀論、来世、オカルトなどに目を向けがちです。これはNaokimanやキリン、ウマヅラビデオ、都市ボーイズなど、都市伝説系YouTuberの台頭からも伺えるでしょう。

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このコミュニティの中心にあるハッシュタグは『#WitchTok』です。これは、168億回の視聴回数を記録した現代の魔術のメッカです。このハッシュタグでは、呪文を唱えたり、タロットカードを読んだり、「精霊とコミュニケーション」しているコンテンツと出会うことで出来ます。

しかし、このコミュニティは何もそのような子供じみたコンテンツに終始しているわけではありません。このコミュニティには自己実現、自己啓発、健康、マインドフルネスなどに焦点を当てたより現実的な側面があります。これは特に『#MentalHeath』(138億ビュー)、『#selflove』(210億ビュー)、『#mindfulness』(4億4150万ビュー)、『#Manifestation』(92億ビュー)などのハッシュタグによって後押しされています。これらのハッシュタグは偉人による名言、メンタルヘルスに関する個人的な記録やアドバイス、瞑想についてのビデオなど、自己実現や自己啓発に関する多種多様なコンテンツで構成されています。 

ミレニアム世代以前においてはメンタルヘルスやスピリチュアリティは話題にするにはあまりに退屈で冷めたテーマだと認識されていました。しかし、生まれてこの方多くの理不尽を強いられてきたZ世代は、より公平な世界を嘱望するあまりスピリチュアルなテーマに傾倒しやすい傾向があります。また、TikTokを含むSNSは必ずしもオフラインでは話しやすいとは限らない事柄をユーザーが語りやすいプラットフォームであり、したがってユーザーはこういったセンシティブな話題でさえコミュニティを見つけ、ファンダムを育んでいく傾向があります

(3/5)サステナビリティコミュニティ

TikTokは環境に関する前向きな影響をもたらしたいと考える人々のコミュニティを支えるプラットフォームの側面を持ちます。

TikTokはそのローンチ当初からこのコミュニティへの積極的な支援を表明しており、有名なものには「EARTH HOUR(アースアワー)」への参画があります。これは、2007年にオーストラリアで始まった世界中の人びとが同じ日・同じ時刻に一斉に消灯することで地球温暖化防止と環境保護の意志を示す、世界最大の環境保護キャンペーンの一つで、TikTokはハッシュタグ『#アースアワー』や、オリジナルスタンプの発表でこのキャンペーンへのユーザーの参加を積極的に呼びかけてきました。

このトレンドの中核は、DIY、アップサイクリング、持続可能性です。実際にTikTokでこのコミュニティの盛り上がりが顕著に目立ってきた2020年頃を境に、イギリス発のフリマアプリDepopも足並みを揃えるように急速に成長を遂げました。このアプリは言わば、Z世代間の古着の売買をサポートするためのものですが、こうしたアプリの隆盛からも彼らのサステナビリティに対する強い関心を伺い知ることが出来ます。

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(4/5)本コミュニティ

Z世代はこのコミュニティを通じて読書への愛をアピールしています。おすすめの本を動画で共有したり、簡単なレビューを発信したりするだけでなく、お気に入りの本のお気に入りの一節を読んだり、その本にまつわる雑学をまとめたり、様々なハイクオリティで刺激的なコンテンツを日々作成しています。このコミュニティで頻繁に使われるハッシュタグ『#Booktok』や『#本の紹介』は、Z世代を本の虫に変えつつあります。

こうした傾向は、とあるTikTokユーザーが小説「残像に口紅を」(SF小説家の筒井康隆が30年以上前に執筆したSF作品)を紹介したところ、思いの外反響があり全国の書店やネット販売で売上が急増、35000部の緊急重版が行われるといったある意味異常な現象からも伺うことが出来ます。

そもそもTikTokはリミックス機能やデュエット機能など、他のどのSNSプラットフォームよりもユーザーの双方向性が強い特徴があります。TikTokを使えばZ世代はどんなにニッチであっても同じ対象に興味を持っている他の人々を見つけ、話し、時に購買意欲を刺激し合うことがあります。こうした背景から、既に多くのの出版社ではTikTokを今後攻略の必要のあるマーケティングツールだと認めています

(5/5)ローラースケートコミュニティ

ここ最近明らかになったのは、TikTokユーザーのローラースケートへの深い愛でした。ハッシュタグ『#Rollerskating』は51億回の再生回数を記録し、作成された動画の数に至ってはこの1年間でおよそ4893%増加しています。

このハッシュタグでは、クロップトップとレトロなパンツでローラースケートを滑る(そして大抵の音楽には”チルい”音楽が埋め込まれています)Z世代を見つけることが出来ます。しかしなぜ、今になって1970年代に死んだはずのローラースケート文化が再び注目を集めているのでしょうか?それは、Z世代の郷愁的な性格や過去への憧れと深い関係があるかもしれません。

これに加え、ローラースケートは一般的にコミュニティ的スポーツであり、これはTikTokの持つ双方向的な特徴と親和性が高いと言えます。このコミュニティでは、ユーザーが熱心にローラースケートの大会やパーティーの場所を共有する動画を共有しており、オフラインでのユーザー同士のコミュニティの発展にも影響を与えています。

結論として…

もしあなたが何かしらニッチな趣味を持っている場合、TikTokで新しい”家”を見つけることが出来るかもしれません。Z世代の精神の中核には、人と繋がりたいという原始的な願望があります。ブランドがこれらのコミュニティについて学び投資するほど、これらのコミュニティに属する人々はより忠実な消費者へ変化することが期待出来るでしょう。

あなたが知らない地下で帝国を築くTikTokコミュニティ5選”へ1件のコメント

  1. より:

    興味深い記事で一気に読ませて頂きました。これからも頑張ってください。応援しています。

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