SNS時代の サブリミナル・マーケティング

ミレニアル世代の読者は、90年代の終わりから10年頃にかけて、ガラケーでメールのやり取りを行っていた日々を思い出してみて下さい。当時、友達が突然「このメールを○○人に転送しないと命を狙われる」という脅し文句をのメッセージを送ってきた経験はないでしょうか?

マーケティングにおけるサブリミナル効果( サブリミナル・マーケティング )とは、広告主がキャンペーンで絶妙なメッセージを使用し、目撃した者に気づかれないように行動に影響を与える一連の手法です。これは過去に大きな論争の的となったテーマでもありそれは主に「人の心をコントロールする」ことの倫理性を巡るものでした。

一般的にこの効果は、非常に絶妙な量とタイミングでポジティブな感情や記憶を誘発することが多いです。例えば、AmazonのロゴはAからZまでを矢印でただ結んでいるように見えますが、これは「あなたが探しているものは全て揃っています」ということを暗示しています。また、ロゴは笑顔の形をしていますが、これは会社のことを考えるときに幸せな感情を見たものに連想させることを意図しています。

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しかし、サブリミナル効果は脳がその意図を認識しても効果を発揮するのかという大きな議論があります。つまり、意図を理解した上でメッセージを見たからといって、そこにはまだ効果は残っているのでしょうか?

この点でTikTokは、新しい時代のサブリミナル効果を見事に体現しています。つまり、チェーンメールと同じ特性を持つバイラル性コンテンツを一つのマーケティング手法へ昇華しているのです。

ユーザー生成コンテンツ(UGC)がプロモーションのための素晴らしい手法であることは周知の事実です。Doja Catの「Say So」やLil NasXの「Old Town Road」など、現在世界的にヒットている曲の多くは、UGCの力によって成功を収めています。しかし、TikTokアプリ内においても様々な音楽が飽和状態になっている今、より多くのユーザーにリーチするためには、よりクリエイティブなマーケティング手法が必要とされています。それが『SNS時代のサブリミナル・マーケティング』です。

TikTokを頻繁に利用している人は、「共有からLINE開いて3番目の人はあなたのことが好き」といった投稿文を一度くらいは見たことがあるでしょう。TikTokのアルゴリズムはコメント数やハート数と同じくらい、その動画がどれだけ共有されたかを重視します。共有からLINEを開いた時点でその動画はユーザーによって共有されたことにカウントされるため、3番目の人があなたのことを好きかどうかはさておき、このような形のプロモーションは実際に機能しています。これはユーザーが自ら無意識に広めているプロモーションであり、まさにSNS時代のサブリミナル・マーケティングと言えるでしょう。

最近では、Dermot Kennedyの「Better Days」キャンペーンが有名です。この曲をTikTokのサントラにして、「この動画を見てから5分以内に同じ音楽を使って動画を作れば良いことがある」というメッセージを広めており、たいていは実際に効果があったという「証拠」がついています。その結果、この音楽を使った動画は現時点で24万本以上作成され、2,000万回の再生回数を記録しています。ではこれは魔法でしょうか?いえ、SNS時代のサブリミナル・マーケティングです。

@grandadjoe1933

She’s got months of this, anyone got ideas of what we can do to help the boredom? #minivlog #dayinthelife #family

♬ Better Days – Dermot Kennedy

このマーケティング手法のポイントは、ユーザーが今後、この曲と正の相関関係を持つようになることです。ユーザーは、自分の人生におけるポジティブなことをこの曲に関連付けるようになっているので、今後この曲を聴くとポジティブな感情が沸き上がるようになります。このサブリミナル・マーケティングの手法が、TikTokで従来欲見られたマーケティング(ダンスのコピー、チャレンジへの参加など)と異なるのは、ユーザーの脳に積極的に感情を植え付け、それが市場価値を生み出していることにユーザー自身も気づかない点です。

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